主訴は、
右肘・前腕の痛み
右手を挙げる時や、移乗などで介助者につかまる時、お尻をずらそうとアームレストを把持する時などに強い
左 変形性股関節症 Grade4
手術適応レベルだけど、心不全の合併症で手術できず
可動域
屈曲 90°、 伸展 -20°、 外転 -10°
安静時痛 (-)、運動時痛 (+)、荷重時痛 (+)
左への荷重を避け、座ったら右に崩れる。
右腕は、肩甲骨を外転上方回旋して、上腕も内旋、前腕回内位。
腕橈骨筋を常に緊張させていて、
腕頭関節に圧縮が起こり、その関節や筋肉を、その位置から動かすのが痛い・・・
という結果。
こうした評価と考察から生まれるのは、
座位アライメントを整えようかと。
そのためには左股関節への荷重を促すポジショニングや、可動域を少しでも広げようかと。
ありがちです。
まだまだその思考も抜けません。
実際、数回繰り返し、
左股関節の可動域や痛みが減少すると、その場の座位アライメントは整って、なんだかイイ。
やった感がある。
でもやっぱり戻るんです。
生活とのコンテキストがない。
もちろん、
ベッドの向きや、移乗の方法、色々考えてご家族と試行錯誤をしました。
それでもやっぱり・・・コンテキストがない。
本人の中で。
そこで見回す。ことを見てみます。
右後ろ、だいぶ後ろまで見えます。
左後ろ、自分より後ろには振り返れません。
右方向へは身体が組織化してる、左方向へは体の色んなところがついてきません。
そういえば、前に座って話をしてても、やや右向きにして、話をしています。
この方にとって、右前に自分が居た方が、話やすそう。
舌を見てみると、見事に右に偏移。
口の中から右のほっぺを舌で押せます。左、ほとんど押せません。
おまけに、無理に左に振り返ろうとすると、息があがってきます。
生活の中で、
左を向くという意図を促す環境が減ってない?
と、ご家族に聞いてみます。
日常、
家で過ごす時は車いすに座ってテレビ、外を眺めて過ごす時も、ベッドから起きる時、ポータブルトイレへの移乗も全て、右側へ向いていると。
それでは、
左をみることへの体の組織化は必要がない。
だからしない。
そこで、
左を見ようという動きの中で、その動きを組織化するための色々な試みを。
とは言っても、易疲労なので、大したことせず。
最初ちょっと左側から雑談したり、
店のテレビをやや左に配置した所で話たり、
その中で右手の位置をいろいろと提案したり。
舌の動きを促してみたり。
すると左股関節が辛くなってきます。
しめしめ使われ始めたか、と。
必要になった時点で、必要なだけのアプローチをします。
でも、よっぽど左へ意識を向ける事が非習慣とわかりました。
今までにないほどの疲労感、眠気。
高齢になってから習慣、を変えるって、すごくエネルギーいるんだなぁって教えてもらいました。
そんな事をご家族に伝え、
日常でのテレビと車いすとの配置、外を見る時の配置。食事介助をするなら左から。
を、ほどほどに始めましょうという提案。
いくら左股関節やったって、この方には必要がなかった。
そんな可動域は使われていかない。
そりゃー、その場だけ。
コンテキストがなかった。
また学ばせていただきました!
これからの変化が楽しみです。
感謝。